キノクニシオギク

キク科の植物の一種

キノクニシオギク(紀国潮菊、学名: Chrysanthemum kinokuniense (Shimot. et Kitam.) H.Ohashi et Yonek.[1])は、キク科キク属分類される多年草海浜植物の1[4][5][6]シノニムDendranthema shiwogiku (Kitam.) Kitam. var. kinokuniense (Shimot. et Kitam.) Kitam.[2]Chrysanthemum shiwogiku Kitam. var. kinokuniense Shimot. et Kitam.[3]で、シオギク変種として扱われることもある[5][6]。別名がキイシオギク(紀伊潮菊[4][1]1930年に下斗米直昌が和歌山県白浜海岸に生育していた本種を研究し、植物学者の北村四郎に要請して、シオギク Chrysanthemum shiwogiku Kitam. の新変種 var. kinokuniense Shimot. et Kitam. として命名された[7]

キノクニシオギク
キノクニシオギク、三重県度会郡南伊勢町にて、2020年12月10日撮影
キノクニシオギク
三重県度会郡南伊勢町にて、2020年12月
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: キク目 Asterales
: キク科 Asteraceae
: キク属 Chrysanthemum
: キノクニシオギク C. kinokuniense
学名
Chrysanthemum kinokuniense (Shimot. et Kitam.) H.Ohashi et Yonek.[1]
シノニム
  • Dendranthema shiwogiku (Kitam.) Kitam. var. kinokuniense (Shimot. et Kitam.) Kitam.[2]
  • Chrysanthemum shiwogiku Kitam. var. kinokuniense Shimot. et Kitam.[3]
和名
キノクニシオギク

特徴編集

イソギクとシオギクとの中間的な形態[4]の下部はやや匍匐し、高さ20-30 cm[8]は厚く、長さ2-5 ㎝、幅1-3 ㎝で全縁または上半は羽状に浅裂し、裏面は銀白色で[8]縁は白色[9]。イソギクに似ていて[4]、シオギクよりも細長く[6]、倒披針形のものが多く、羽状浅裂する[5]花序頭状花序で、頭花は直径8 mm前後で、多数の筒状花をつけ[8]、イソギク(直径約5 mm[9])より少し大きく、シオギク(直径8-10 mm[9])との中間くらい[4]花柄はイソギクより長く、頭花はイソギクほど密生しない[5]。頭花のまわりの雌花はノジギクのような舌状にならない[4]。花期は10-12月[4]。毎年地上部は期に枯れて、根茎また は茎の基部から新芽を伸ばして翌年茎となり栄養繁殖する[10]。また種子繁殖もして新しい個体が生じる[10]

日ノ御崎周辺ではシマカンギクとの雑種であるヒノミサキシオギクD. x ogawae Kitam.)がよく見られる[4][5]。本種と栽培菊、リュウノウギクとの雑種も発見されている[4][5]

分布と生育環境編集

 
海を臨む斜面の土壌のあるところや、岩壁の隙間などに生育するキノクニシオギク
三重県志摩市にて

日本紀伊半島固有種[8]三重県和歌山県に分布する[4][5]。東限は三重県鳥羽市国崎町で、志摩市大王崎、御座岬)、尾鷲市元行野、熊野市新鹿町鬼ヶ城、羽市木)、和歌山県東牟婁郡那智勝浦町宇久井半島駒が崎、太地町梶取崎串本町(古座石切、紀伊大島の戸島崎と樫野崎、出雲崎、潮岬)、西牟婁郡すさみ町白浜町など、日高郡美浜町日ノ御埼にかけて[10]太平洋海岸に沿って分布する[4][5]

を臨む斜面の土壌のあるところや、岩壁の隙間などの直接を被らない場所[8]に生育する[10]。特に岩壁や断崖上に群落をなすことが多い[11]ノイバラアゼトウナハマボッスなどがわずかに混じり、トベラハマヒサカキが混じる場合もある[11]

近縁種との識別ポイント編集

形態が似る同のシオギクとイソギクとの識別ポイントを下表に示す。キク属は、染色体の数を大きく変化させながら進化したことが知られていて、染色体数が8倍体(2n=72)のシオギクが太平洋岸を西から東に向かって染色体の数を増やしながら、染色体数が10倍体(2n=90)のイソギクに進化したものと見られている[12]。本種は染色体数は8倍体(2n=72)と10倍体(2n=90)があり、8倍体の個体の外部形態はシギクに、10倍体の個体はイソギクにそれぞれかなり似ている[13]。本種は8倍体のシオギクと10倍体のイソギクとの間の移入交雑によってできたものと推定されている[13]

和名
学名
画像 識別のポイント
シオギク
C. shiwogiku
  頭花直径:8-10 mm[9]
分布域:徳島県、高知県[9]
染色体数:8倍体(2n=72)[13]
キノクニシオギク
C. kinokuniense
  頭花直径:8 mm前後[4]
分布域:三重県、和歌山県[4]
染色体数:8倍体(2n=72)、10倍体(2n=90)[13]
イソギク
C. pacificum
  頭花直径:約5 mm[9]
分布域:千葉県、東京都、神奈川県、静岡県[9]、愛知県[14]
(京都府、島根県、山口県[15]
染色体数:10倍体(2n=90)[13]

種の保全状況評価編集

日本では環境省による国レベルのレッドリストの指定を受けていないが[16]、分布域の以下の両県でレッドリストの指定を受けている。吉野熊野国立公園の指定植物で、特別地域内で許可を受けずに採取又は損傷してはいけない対象種の指定を受けている[17]

  • 準絶滅危惧 - 三重県[18]、和歌山県[8]

脚注編集

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  1. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “キノクニシオギク”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年8月16日閲覧。
  2. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “キノクニシオギク”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年8月16日閲覧。
  3. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “キノクニシオギク”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年8月16日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m 門田 (2013)、525頁
  5. ^ a b c d e f g h 佐竹 (1981)、165頁
  6. ^ a b c 林 (2009)、71頁
  7. ^ 下斗米 (1968)、498頁
  8. ^ a b c d e f 和歌山県レッドデータブック「2012年改訂版」、植物 (PDF)”. 和歌山県. pp. 321. 2021年8月17日閲覧。
  9. ^ a b c d e f g 門田 (2013)、524頁
  10. ^ a b c d 下斗米 (1968)、499頁
  11. ^ a b 谷口 (1958)、159頁
  12. ^ イソギク”. 筑波実験植物園. 2021年8月17日閲覧。
  13. ^ a b c d e 下斗米 (1968)、505頁
  14. ^ レッドデータブックあいち2020、イソギク (PDF)”. 愛知県. pp. 182. 2021年8月17日閲覧。
  15. ^ 京都府レッドデータブック2015、イソギク”. 京都府. 2021年8月17日閲覧。
  16. ^ 環境省レッドリスト2019の公表について”. 環境省. 2021年8月17日閲覧。
  17. ^ 吉野熊野国立公園特別地域内で許可を受けずに採ってはいけない植物”. 三重県. 2021年8月17日閲覧。
  18. ^ 三重県レッドデータブック2015、維管束植物 (PDF)”. 三重県. pp. 640. 2021年8月17日閲覧。

参考文献編集

  • 門田裕一、畔上能力、平野隆久『野に咲く花』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2013年3月30日、増補改訂新版。ISBN 978-4635070195
  • 下斗米直昌、安達貞夫、益森静生「キノクニシオギク(Chrysanthemum shiwogiku var.kinokuniense)に関する細胞学的・形態学的および地理学的研究」『植物学雑誌』第81巻第964号、日本植物学会、1968年、 498-505頁、 doi:10.15281/jplantres1887.81.498NAID 130004213116
  • 谷口森俊「志摩半島南部の植物群落学的研究」『植物分類』第17巻第5号、日本植物分類学会、1958年、 155-160頁、 doi:10.18942/bunruichiri.KJ00001077810NAID 110003759236
  • 『日本の野生植物 草本Ⅲ合弁花類』佐竹義輔大井次三郎北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫、平凡社、1981年10月。ISBN 4582535038
  • 林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421

外部リンク編集